Fields

私たちは様々なフィールドで調査をおこなっています。ここでは、その主な調査地を紹介します。




北大天塩研究林
  • 所在地:宗谷振興局天塩郡幌延町問寒別
  • 面積:22,400ha
  • 調査期間:春 4月下旬~5月GW
                           夏 7月下旬~8月中旬 各2週間ほど
                           秋 9月下旬~11月上旬の週末
  • 調査基地:上問間寒作業所



北大天塩研究林(北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター付属天塩研究林) は、大学付属研究林として最北端(北緯45度)に位置し、 国内研究林としても最大級の面積を誇っています。 林内を縦に走る問寒別川の東側には蛇紋岩地帯が広がり、アカエゾマツの純林が広がっています。 また、一部地域にはテシオコザクラ・オゼソウ等の貴重な植物の群生地も広がっています。 変わって西側は泥炭地帯が広がり、トドマツやハンノキ等の針広混交林に覆われています。 かつては石炭や海竜の化石等が採掘されている場所でした。

天塩での調査は1975年から40年以上ほぼ毎年行われており、 過去には春グマ一斉駆除制度や森林環境の悪化などによる生息数の減少、 その後の生息数の回復といった個体群の変動の様子も我々の調査結果に克明に表れています。 今後は調査を引き続き行うとともに、過去のデータを整理し、 ヒグマの生息数回復に伴う生息地の拡大を追って行きたいと考えています。

現在は春季・夏季・秋季と例年で三度の調査を行っています。2019年度からは冬季の調査も始めています。調査は春季と夏季は沢・林道を、秋季と冬季は林道を歩き、ヒグマの痕跡(採食跡・足跡・糞など)を探します。 沢・林道からなるルートを研究林内にくまなく約30ルート設定し、 調査期間中に研究林内にヒグマが何頭いたか・どこにいたか等を推定しています。

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天塩は自然の厳しさや力強さを感じさせてくれるとともに、私たちに多くのことを考えさせます。踏査中に様々な動物の痕跡を見つけたり、地図を読んだり、川にダイビングしたりと楽しいことはもちろん、研究者としても人としても成長できます。ただし、人として堕ちていく人もいます(笑)。

私は天塩の水が好きです。踏査中に岩に腰かけ、足を川の水の中に入れ、流れる水を見つめ、休息をとる。足先から伝わってくる水の冷たさが心身の疲れを払拭していき、その水の透き通った美しさからはエネルギーを得る。こんな感覚になれるのは天塩だけです。しかも、クマ研として調査しているときにのみ感じられます。みんなにも一度感じてほしいですね。もちろん春にこんなことやったら、足先の感覚がなくなるので注意です!


さぁみなさん、天塩へ行きましょう。



大雪山黒岳

  • 所在地: 北海道大雪山系
  • 調査期間: 8月上旬~9月上旬
  • 調査基地: 黒岳石室、高原温泉(2020よりヒグマ情報センターの協力のもと)



以前はトムラウシ山周辺でも調査が行われていましたが、現在は黒岳周辺の お鉢平・凌雲岳・北鎮岳・雲ノ平を主な調査地としています。 さらに2020年よりヒグマ情報センターのご協力をいただいて、大雪山の高原温泉でも調査を行うことになりました。当調査地は北大クマ研の調査地の中でも唯一ヒグマを直接観察できる場所であり、 その利点を生かしてヒグマの個体間関係・登山者とヒグマの関係・ヒグマの採食生態など さまざまな調査が行われてきました。調査地は高山帯ということもあり、 植生としてハイマツ・ミヤマハンノキ・ウラジロナナカマドといった 木本類やハクサンボウフウをはじめとした多くの高山性の草本類をみることができます。 気候は森林限界ということもあって冷涼で、9月まで残雪がみられ、また早い年では10月に降雪が始まります。 一度の調査で春から冬を体験できるという意味でも、大変貴重なフィールドではないかと思われます。

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山の中をガンガン駆け巡る天塩調査とは異なり、大雪調査は朝早くから夕方まである地点から双眼鏡やプロミナをのぞき込んでヒグマを探すといったように比較的穏やかな雰囲気のある調査です。もちろん毎日ヒグマが見られるわけではありませんが、大雪調査では御鉢平をはじめとするきれいな景色やリス・ナキウサギ等の動物、高山帯特有の植物なども見ることができるので決して飽きることはありません。また少人数でのテント泊で普段はあまり話さないような人たちとも親睦を深めることができます。このように大雪調査は様々な魅力をもった調査なので興味をもった方には是非参加してみてもらいたいです。


石狩西部

  • 所在地: 北海道札幌市西区・南区
  • 調査期間: 通年 (冬眠穴調査は3月上旬~下旬)
  • 調査基地:座禅荘(札幌市内)




札幌市は190万人の人口を抱える日本有数の大都市でありながらも、市内の7割近くが森林に覆われています。 また、この一帯はヒグマの生息地域としても知られており、 しばしば人里に下りるなどのニュースで世間を賑わせる程、 人とヒグマとの距離が近い場所でもあります。

しかし、札幌市を含む石狩西部地域のヒグマ個体群は絶滅が危惧されているにも関わらず、 個体の分布や行動範囲等に関するデータはほとんど存在しませんでした。 そこでクマ研では、 講義がある期間は週末を利用して痕跡データの蓄積を試みています。 3月には冬眠穴探索を中心に調査を実施しています。冬期間は移動手段として山スキーやかんじきを使います。
 






登別クマ牧場

  • 所在地: 北海道登別市
  • 調査期間: 7月下旬
  • 調査基地:クマ牧場近くのキャンプ場

いわずと知れた登別クマ牧場です。 たくさんのヒグマが寝たり遊んだりしています。
主に大雪の調査へ向けたトレーニングを目的として、 7月中旬~下旬の週末に足を運びます。 テント生活の基礎と、ヒグマの性別や個体識別を中心にトレーニングを行います。


下北半島

  • 所在地: 青森県下北郡佐井村
  • 調査期間: 12月下旬
  • 調査基地: 佐井村・大間町・風間村



ヒグマの調査ではありませんが、毎年暮れに下北半島でニホンザルの行動に関する調査のお手伝いをしています。 個体群の行動圏や生息環境の変化を知るため、主に採食跡や個体群の直接観察、テレメトリー調査等を行います。 クマ研の他にも例年多くの個人や団体が参加しているため、調査基地は大変賑やかです。




過去の調査地


過去には以下の地域でも調査が行われていました。2019年現在では行われておりません。
設立以来の調査記録はクマ研のシェアハウスに紙媒体で保管されており、閲覧可能です。


北大中川研究林 ... フキ資源量調査等

洞爺湖中ノ島 ... エゾシカ生息環境のモニタリング

日高山系(幌尻・カムイエクウチカウシ岳・他)

知床周辺

岐阜白山ツキノワグマ聞き込み調査

支笏湖周辺

道南

東大富良野演習林

 
浦幌道有林 

所在地: 北海道十勝郡浦幌町、白糠郡音別町 (十勝支庁、釧路支庁の境界付近です)

面積: 23276 ha (浦幌町内の道有林面積)

調査期間:(夏期) 8月下旬 /(秋期)10(毎週末)

調査基地:クマ小屋 (浦幌ヒグマ調査会(後述)のベース)

 
浦幌をフィールドとするクマ研としての調査は2003年から始まりました。 浦幌にはクマ研OBで、現在日大の助手の佐藤喜和さんが事務局長を務める、浦幌ヒグマ調査会があります。 浦幌ヒグマ調査会はクマ研の調査が始まる前から野生動物に関する様々な調査をおこなってきました。 クマ研は調査会にベースを使わせていただいたり調査の運営上お世話になっています。

 

さて、クマ研が浦幌でどのような調査をしてきたかというと、やはり天塩や札幌同様痕跡調査が中心です。 林道や尾根、沢の中を歩き、痕跡があった場所を記録します。 痕跡があったということはそこにヒグマに存在したという証拠です。 足跡ではその大きさから足跡を残したクマが、雄か雌か、何歳ぐらいであるかが推測できます。 糞からはクマが何を食べていたかがわかります。 また、痕跡の密度からある地域がクマにどのくらい利用されているのかも推測できます。 単純に思えて結構奥が深いものです。

 

痕跡調査以外では2004年にクマの主要な採食物であるフキ、ミズナラ、コクワやヤマブドウといった つる性植物の分布調査が行われました。 20042005年にはシードトラップ(写真)を用いてミズナラ堅果資源量の年次変化も調べました。 この結果と痕跡調査で発見された糞分析の結果をあわせてミズナラ堅果の豊凶がクマの食性に与える影響を研究しました。

 

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浦幌はちょうど、道央から道東へ向かう入り口にあります。調査地は稜線をはさんで西側と東側に分かれていますが、峠を一つひょいと越えるだけで、大きく異なった地形、生物相があることに気づくはずです。メインは東にあるのですが、沢一杯に踊るアメマス、飛沫をあげて川をさかのぼるサケ、牧草地で餌をついばむタンチョウなどが目玉です。他にもキツネやエゾシカなど、「これぞ北海道!」という光景に、何回でも出会えます。もちろん参加回数に比例しますが・・・(^^;)

 

アトラクションが多いことも浦幌の特長の一つでしょう。渓流釣り、昆虫採集、バードウォッチング、キノコ狩りなど、夏から秋にかけての山の魅力を存分に味わえるほか、運がよければ調査期間中に浦幌町の夏祭りに出かけ、アツアツに焼けた鹿肉をほおばりビールを飲む、なんてこともあります。

 

忘れてはならないのが、浦幌で研究を行なう日本大学の学生さんたちです。ラジオテレメトリー調査、自動カメラ撮影など、高レベルな調査方法が見学できるのは、クマ研の調査地では今のところ浦幌だけ!

 

野生動物に興味があるなら、北海道の自然を満喫したいなら、浦幌に行こう!


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